平然と嘘
嘘ばかり
片山さんは、
「こちらを。」
と、用紙をリビングのテーブルに出す。
それは、離婚届の用紙で。
俺は、澪をみて
「なぜ?」
と、言ったが澪からの返事はなく。
片山さんから
「あなたは、高畑 夕紀さんと
現在また、不倫をされていますね。
22年ほど前にも、一度。
前回の時に高畑さんに誓約書を
作成したのは私です。
当時、あなたは、
もう不貞をしないと
思ったのですがね。
とても残念です。
澪さんは、
慰謝料として1000万。
今住んでいるマンションを所有と
財産の等分を言われています。
私は、慰謝料はもう少しあっても
良いと思いましたが
澪さんがこれで良いと言われますので。」
「えっ?」
としか言葉がでない俺を
納得できないの、か
状況が読み込めないの、か
どちらにせよ
わからない状態の俺に
片山さんは、
その条件の書類の横に
写真を並べていった。
それは、俺と夕紀との写真で
夕紀のマンションに入るとこや
腕を組んで歩いている所や
買い物や旅行に行った時の写真まであった。
それを手に取り、見つめていた
俺に・・・・・
「全てが、嘘から嘘。
嘘で固めたあなたの人生は、
狂っていますよ。
私は、不倫をするくらいなら
私と離婚をしてからと
前回、お話ししましたよね?
次は、それ相当の見返りを
請求すると。
私は、あなたの嘘や
嘘を付きながら、
平然とした態度や行動に
呆れているより恐怖を感じます。」
と、妻である澪の始めて耳にする
冷たい声色だった。
「この条件が、不服なら
裁判に持ち込んでください。
ですが、そのときは
あなたの会社にも
高畑さんの職場にも
不貞を働いた事は知らさせて頂きます。
いかがされますか?
あなたと高畑さんには、
先ず勝ち目はありません。
奥さまである澪さんには
一切の非がありませんから。
それに、一度目の誓約書も
ありますからね。」
と、片山さん。
「なっ!」
言葉が出なかった俺に
お袋が、
「10年も澪ちゃんを欺いていたんだね?」
と、言うから
「ちがっ、違う、8年前に
再会したんだ。」
「あっ、そう。
8年も、澪ちゃんを欺いていたんだ。」
と、お袋に言われて
嵌められたと思ったが
後のまつりだ。
「先生。
このマンションに
あの人を入れたくありません。」
と、言う澪の言葉に片山さんが、
「明日 高畑さんと
一緒に私の事務所にお越し下さい。」
と、言われた後、
澪から
「これを持って、
ここから、直ぐに出て行って下さい!」
と、俺のキャリーバッグと
鞄を出された。
中身は、俺の服などが入っているようだ。
「後の物は、お義母さんの
所に預けます。」
と、言うが・・・
澪は、俺を一度も見ることは
なかった。
この時も、俺はまだ
事の重大さが
よく、わかっていなかった。