平然と嘘
6️⃣
通 達
夕方になり
片山法律事務所に着くと
母親と澪は座っていた。
少しすると事務員に案内されて
夕紀が入ってきて
母と澪を見てぎょっとした顔をしながら
俺を見た。
片山さんが
「どうぞ、お二人ともお掛け下さい。」
と、言い
澪と母から離れて
俺、夕紀は、座らされた。
片山さんは、俺達の向かい側に立ち
ホワイトボードに
俺達の写真を次々に貼り
俺と夕紀にしか見えないように
配慮してから座った。
夕紀は、その写真から目を反らせずに
見つめていた。
片山さんは、俺に
「純也さん、離婚届に記入して
頂けましたか?」
と、言った。
夕紀は、パァっと、明るい顔をして
俺を見たが。
俺は、鞄から離婚届を出した。
記入はしてきた。
保証人欄には、会社の同僚に
頼むしかなかった。
澪の方に、母親が記載していたから。
書いてもらってから
同僚は、俺にバカな奴だと
一言だけ言って去って行った。
片山さんは、それを確認すると
「ありがとうございます。」
と、俺に言いながら
書類を俺と夕紀に
二部ずつだした。
四枚とも澪の印鑑と母親の印鑑が
押してあった。
(一部は、澪。一部は、俺達の分だ。)
俺のは、昨夜、片山さんに
言われた内容だった。
一つ
慰謝料として1000万円
[夫婦所有の財産からは
支払わないこと]
即日振り込み・期日厳守
守れないときは、倍額にする。
一つ
分譲マンションは、
笹川 澪さんの所有とする。
所有変更にかかる費用の一切を
荒川 純也氏が持つこと
一つ
夫婦共有の財産は、
均等に分ける。
「最後は、夫婦資産になりますから
預金だけですよね。
預金は、こちらでお調べしますので
また、御連絡します。
先ずは、お持ちの銀行名をお知らせ下さい。
澪さんのは、もうわかっております。
あ~と、純也さん、もう嘘は、
やめてくださいね。」
と、片山さんは言い。
「澪さんは、あなたの退職金や
生命保険等は、必要ないとの事です。」
と、言った。