平然と嘘
純也さんは、ベッドに寝ている。
移動で疲れたみたいだ。
前の先生の所見には、
余命半年と記載されていた。
もう、残された時間は少ない。
私は、音をたてないように
純也さんの荷物を片付けて
純也さんの書類を確認していく。
会社を退職していた
『倉庫係』?
彼は、製造の課長だったはず・・・・
住まいは・・・・会社寮?
そちらも退寮となっていた。
彼の資産は、
預金と退職金。
退職金で、私への慰謝料を
支払っていた為
それを差し引かれているはず。
すべてを治療費と
こちらのホスピスに
あてている。
すると・・・・・
「澪?」
顔をあげてベッドをみると
純也さんと目があう
お互いに言葉がでずにいたが
純也さんの目から
次々に涙が溢れて
「じゅっ。荒川さん、どこか
痛みがありますか?」
と、言うと
純也さんは、首をふりながら
「大丈夫です。」
と、言う。
バイタルのチェックをしてから
改めて
「担当の笹川です。
笹川 澪と申します。
宜しくお願い致します。
何でも、おっしゃって下さい。」
と、言うと
「ありがとうございます。
宜しくお願い致します。」
と、ベッドに横になりながら
頭を少し動かした。
私は、純也さんの部屋を出て
ナースステーションに戻り
入所完了の報告をした。
ここでは、
食事介添え者と介護担当者
看護師がチームを組んで行う
そのチームを担当看護師が
まとめるといった流れになっている。
純也さんの食事は、
流動食を少しと点滴。
入浴は、
体調の良いとき寝たまま入浴
と清拭。
床擦れ防止で体制を変える。
移動は、車椅子となっている。
打ち合わせ終えてから
師長にだけ、元夫である事を話した。
身内がいないことを含めて。
師長は、
「自分できちんと
考えて悔いのないようにしなさい。
あなたは、それができる人だから。」
と、言ってくれた。