三次元彼氏。
そこまではよかった。
そこから僕のアパートへ向かう10分間の道のりで、突然の強風に煽られ、折り畳み傘は簡単に壊れた。
頭だけでも雨から守れたらよかったが、傘はもうどうにもならないくらいの状態で、僕は仕方なく土砂降りの中を走ってアパートへ帰った。
中に入るなりすぐにタオルで頭と体を拭いたが、ずぶ濡れになったリュックの中身が心配になり、開けると見事にテキスト類は水浸しだった。僕は慌てて中身を全部出して乾かし始めた。
その作業が終わる頃には自分の髪も服も乾いていたが、冷えた体を温めるために風呂に入った。
それからちゃんとごはんも食べたし、暖かくして寝た。
……のに、朝起きたらこれだった。
何で、よりによって今日…………
手の中のスマホが鳴った。重い腕を起こして、画面を見る。
【え、大丈夫? 頭痛いの? ごはんは食べれた?】
【頭は痛くないけど、ぼーっとする。ごはんは食べてない】
【熱は?】
【体温計ないから測ってないけど、たぶん熱はない】
【解った、今から行くね】
え……?
今から行くって…………僕の家に…?
……どうしよう、乾かすために広げたテキスト類は床にそのままだし、壊れた傘も玄関に転がったままだ…