三次元彼氏。
「え? ホテル? …あーその手もあったか」
「え…?」
「会社の割と近めのとこに宗のアパートあったから、ここでいいじゃんって思っただけ」
嘘だろ………。
一応何で来たのか訊いたら、耳を疑いたくなるような答えが返ってきた。
「…ホテル空いてるならそっちでよかったじゃん」
「……いや、ホテルとか予約面倒くさいし、ここなら宿泊費ゼロだし予約もいらないし。てか聞いてよ、企業説明会行くのに交通費も宿泊費も自己負担なんだよキツすぎ〜〜」
「……」
…もう言い返す気力すらなくなってきた………。
予約いらないって………今日僕がたまたま家にいたからよかったものの、もし出掛けていたらどうするつもりだったんだ…………
たぶんこんなことを言っても、姉は適当に言いくるめて終わるんだろう。
さっきも、「着替え出すの忘れてた〜!」とか言いながら、バスタオル1枚で洗面所から出てきた時は本当に戦慄した。
姉は昔からかなり自由奔放で、僕は幾度となく困らせられた。
姉が街の大きな大学に進学するために家を出るまでの17年間、一緒に過ごしてきた時間はそれなりに長いが、姉はいつも予想の斜め上を行く言動をするので、未だに慣れない部分も少なくない。