三次元彼氏。
「…姉さん、そろそろカゴから溢れそうなんだけど」
なおも勢いが止まらない姉に声を掛けると、
「あったレモンサワー。宗も飲む?」
……聞いちゃいない。
「飲まないよ、未成年だし」
「……あーそっか、まだ19ちゃいか」
「…」
「じゃあ宗はオレンジジュースね」
「え…」
「ハイじゃあお会計ー」
とどめのオレンジジュース2リットルを載せると、姉は「やばー、量えげつな」と笑いながらカートを押した。
「宗重たい…」
「当たり前でしょ、あんな量買ったんだから」
「家遠くない? 後何秒?」
「秒じゃ着かないよ」
…本当に重たい。
今まで、自分で買い物をする時は1週間分くらいの量を買って帰るだけなのに、今日はたぶん3週間分…いや1ヶ月はもつかもしれない。
行きは15分で着いたのに、30分くらい掛かって家に戻った。
「疲れたー!」
ようやく重たい荷物から両手が解放され、姉は床に転がり込んだ。
「あつーい、アイス買えばよかった」
「…」
床でへばる姉を横目に、僕は食材を冷蔵庫に入れ始める。
「万年帰宅部の宗が何でそんなけろっとしてんの?」
「普通だよこれくらい…ていうか姉さんバレーやってたでしょ、体力あるでしょ」
「そんなん高校までの話だよ、若かったなあ」
何言ってんの、と言いながら、何とか大量の食材を冷蔵庫に収めた。