三次元彼氏。


「あ、そうだ舞香さん………これ、宗ちゃんに似てませんか? 初めて宗ちゃんを見た時、このページが浮かんできたくらい似てると思って…!」

「えー、どれどれ?」

ほのかは漫画を開いてそのページを見せる。おそらく、僕がポーズを取らされたあのページだろう。


「えー…」と眉間にシワを寄せながら、漫画と僕を交互に見る姉。何だよ…………


「言われてみれば……雰囲気は似てるかもだけど、宗はこんなにイケメンじゃない」

「えー、そうですか?」

何だよ。別に何も期待していたわけじゃないけど、何となく傷つくのは何故……いやイケメンじゃないし姉の言う通りだけど………。



それから残りの材料も使い果たして、みんなで片付けをしていると、

「え、やばもうこんな時間!?」

姉が不意にスマホの時刻を見て小さく叫んだ。


「どうしたんですか?」

「そろそろ帰んないと! 夜から女子会する予定なの」

「えっ、じゃあもう片付けいいですよ!」

「ごめんね、最後まで手伝えなくて」

「気にしないでください」


ジャケットを羽織り鞄を持った姉は、急にピタリと動きを止めた。

「…どうしたんですか?」

「宗の家にスーツケース忘れてたわ」

「あー…」

僕も完全に忘れていた。


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