三次元彼氏。


やがて店員さんがテーブルの網の火をつけていったところで、早瀬は「あー」と声を漏らした。

「どうしたの?」

「何か忘れてると思ってたんだけどさ、今日中にデータ提出する課題何もやってなかったの思い出した」

「えっ」

焼肉なんて食べに来てていいの…!? と思ったが、目の前の早瀬は呑気に「まあ終わるでしょ」と笑った。



「っあー、食べたあー」

それから約2時間、いろいろな話をしながら焼肉を楽しみ、ちょうど夜ごはんの時間帯になってきた店内は少しずつ賑わってきている。


「出ようか。混んできたし、早瀬も課題やらなきゃいけないし」

「あ、忘れてたわ」

「え」

あぶねー、と頭を掻きながら、早瀬は残りの水を飲み干した。



「じゃあまた月曜な」

「うん。課題頑張ってね」

「おうよ、秒で終わらすわ!」

早瀬はそんなことを言って、駅に向かっていった。


僕も帰ろうと体の向きを変えると、ポケットの中のスマホが鳴った。


【宗ちゃん、すごいごはんが美味しいお店に来たの、今度一緒に行こう!】

ほのかからのLINEとともに、いつもはあまり使わないスタンプも送信されていた。

よほど楽しいんだろうな…よかった。


【うん、行こう】

僕も、普段滅多に使わないスタンプを併せて送信した。


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