三次元彼氏。


帰ってからは予定通り、実家から持ってきていた、まだ読めていない本を読む。

コップにお茶を入れてきて、テーブルの前に座る。

大学に入学してから、こんなにゆっくり本を読める時間をとれるのはたぶん初めて。

僕は、久しぶりにページをめくる音と指先の感触を懐かしく思いながら、物語の世界に入っていく。





————“ヴー”

スマホが鳴って、物語の世界から現実に引き戻される。

時刻を見て驚いた。…………もう21時を過ぎている。

本を読むと時間があっという間に進むので、もうそんなに経ったのか、と思いながらLINEを開くと、ほのかからのメッセージが5件入っていた。

嘘……全然気づかなかった、本に夢中になりすぎてた………?


【宗ちゃんは夜何食べたの?】

【ごはん楽しい!】

【宗ちゃんの話になったよー】

【美味しいよー】

【宗ちゃんはお肉?】


……最後の何だ………? どういう意味………???


【ごめん、本読んでて気づかなかった。僕は早瀬と焼肉食べてきたよ】

【それはよかった】

【え、ほんと? どうして?】

【よかったー、今度行こうね】

【ん? どういう意味? 僕はお肉好きだよ】


返信を終えて、残り数ページになった物語の世界にまた入る。


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