三次元彼氏。


天音さんの言葉を最後まで聞く前に「解ったすぐ行く」と電話を切り、僕は家を飛び出していた。

ほのかに何かがあったのは、何となく解った。ひたすら足を動かして、歩いて15分の駅まで走る。



「ほのかっ……!」

駅裏の居酒屋がどこなのかは解らなかったが、行けば解った。大学生らしき集団が、ある店の前で固まって話しているのが見えた。

彼女の名前を呼び駆け寄ると、声に気づいた天音さんは僕を見るなり申しわけなさそうな顔をした。そしてその横には、ぐったりと、体を天音さんに預けているほのかの姿。


「ほのか…っ」

「ごめん、滝本くん」

「何があったの…!? ほのか、大丈夫!?」


えっ、熱……!?

彼女の頬は赤くなっていて、僕の声に気づいたのかゆっくりと目を開けたが、いつものほのかの目じゃない。力なく開かれた目で、僕をぼーっと見ている。



「ほのか、完全に酔っ払ってるのよ」


「………え?」


酔っ払ってる………???


「…ど、どういうこと、天音さん……?」

「2軒目でここの居酒屋来たんだけど、ほのか今まで飲んだことないから挑戦してみたいって、カシオレ1杯飲んだ途端、急に喋らなくなって。かと思ったらよく解んない言葉発しながらずっと私にこんな状態だったの」


え………………


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