三次元彼氏。


2冊目に入り、半分ほど読み終えたところで目が少し疲れたので、休憩がてら彼女のゲームをやっている様子を見ていた。

彼女はなおも真剣な表情で、もう指がおかしくなるんじゃないかと心配になるスピードでやっている。


「………っだ、や、やった〜!」

「え、クリアしたの?」

ほのかは両腕を上げ、そのまま背もたれに倒れ込んだ。

「うん、やっとレベル89クリアできた〜! タイムロスしすぎた」

「すごい、おめでとう!」

「ありがとう、けど、もたもたしてられない。今日中にレベル100クリアして期間限定の無料ガチャ引かなきゃいけないの、普通は課金しないと回せないやつ」

「ええっ」

彼女はそう言うと、また体勢を整えて画面と向き合った。

……す、すごいな、全然聞いたことない単語出てきたからよく解らなかったけど…

ほのかはまた真剣にゲームを始めたので、僕もまた本を開いた。



それから数時間後、僕は2冊目も読み終えてしまった。スマホで時刻を見ると……18時半を少し過ぎたところだった。

窓の外は、夕焼けのオレンジ色と空の色が綺麗なグラデーションを作っていて、夏が近づいてきているのを何となく感じた。



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