三次元彼氏。



そして慣れた手つきでマイクを取り、部屋に入って約30分経過。早瀬の7曲目がスタートした。



「無難にカラオケって言った後で早瀬がこんなになるの思い出して。最近行ってなかったから忘れてたの、ごめん。たぶん後3曲くらい歌ったら大人しくなるから」

「いや、全然。早瀬って歌上手いんだね」

「えーそう? 1回も思ったことない」

「天音聞こえてんぞ」




その後、天音さんが言った通り10曲を一気に歌い終えた早瀬は、途端に大人しくなった。


「あーっ張り切りすぎた喉いてぇ」

「何か飲み物取ってくる?」


ソフトドリンク飲み放題がついているらしくフロント横のドリンクバーから自由に飲み物をもらえるので、早瀬にそう訊いた。


「いやいいよ自分で行ってくる」

「あっ待って私も飲み物欲しいカルピス」

「自分で行け、ってか天音歌ってる途中だろ」

「何よ不親切」


歌っていたはずの天音さんが、歌の途中でマイクを通して早瀬に言った。


「ったくしょーがねえな」

もう部屋を出る気でいた早瀬は渋々と戻り、天音さんが歌い終わるのを待った。




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