三次元彼氏。
僕は初対面の人と話すのはあまり得意ではないので、案内のプリントに書いてあった持参資料をパラパラと見ながら、ガイダンスが始まるのを待つことにした。
「…ねえ」
「……え、あ、僕?」
「うん。席となり、よろしく」
「あ、うん、こちらこそ」
空いていた僕のとなりの席に、スポーツが得意そうな男子が座った。
「えらいね、俺それ持ってきてない」
彼の視線は、僕の手元の資料に注がれている。
「えっ、一緒に見る?」
「いーよ、ガイダンス始まったら寝るから」
「ええ、」
だ、大丈夫なのかなこの人……。
「あっ、名前は? 俺は早瀬羽流」
「あ、僕は、滝本宗一郎です」
「宗一郎かあ……なげえな、宗でいい? 俺のことは早瀬でいいから」
「あ、うん、いいよ全然」
そう答えたタイミングで、講義室に先生が入ってきた。
「じゃーそういうことで、これからよろしく。俺寝るから」
「えっ、ほんとに寝るの」
「当たり前じゃん、怠いし。…あ、終わったら起こして」
そう言うと、彼は本当に寝息を立て始めた。