三次元彼氏。
「今度何か奢れよ」
「何でよ」
「1曲待ったから」
「私は早瀬が10曲歌い終わるの待ったよ」
「ぅ、」
勝ち誇った顔の天音さんと完全敗北した早瀬は、飲み物を取りに部屋を出て行った。
部屋には、僕と彼女だけが取り残された。
画面には、見たことのないタレントのような女性が何かの宣伝をしていて、その人の明るい声だけが部屋に広がっている。
…………な、何だろう、沈黙は全く苦じゃないのに、やたらと明るい声が響くせいなのか、彼女との間に流れる沈黙が何となく気になる。
な、何か話題……話を……………
「っあの」「あの、」
驚いた。
隣に座っていた彼女に声を掛けたら、彼女も同じタイミングで僕に声を掛けて、僕達の声が重なった。思わず顔を見合わせる。
「あっ、ごめん、先どうぞ」
「いっいえ、先どうぞっ」
彼女はかなり遠慮したように僕に先どうぞと言うので、僕はこの前訊こうと思っていたことを尋ねることにした。