三次元彼氏。



「…あ、じゃあ、僕達も帰りましょうか。家、どっちですか?」

「あ、大学通りの方です」

「じゃあ近くだ、途中まで一緒に帰りましょう」

「はい」




言ってから、しまったと思った。

一方的に帰ろうと言ってしまったけど、もしかしたら1人で帰りたかったかな…って、そもそも急いで帰りたいんじゃ……。

この前履修登録を教えた時に、16時半と聞いて急いで帰っていった彼女の姿を思い出した。もし家でやることがたくさんあるなら、わざわざ僕と帰る必要はないわけで……。



「あ、いや、もし急いでたりとかしてるなら全然先に帰っても…」

「いや、大丈夫です、今日はいいんです」


それを聞いて、何故かほっとしている自分がいた。



「いつも1人で部屋でこもってることが多いので、今日は何だか新鮮で楽しかったです」

「え…」

「私、友達とカラオケなんて初めて行きました」


そう話す彼女の横顔は本当に嬉しそうだった。



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