三次元彼氏。
誰かの家に上がることすらほとんどなかったのに、人生で初めての彼女の家にって、一体どこでどうしていればいいんだ………
「…あ、適当に座っていいですよ、飲み物持ってきますね、お茶とコーヒーと牛乳ありますけど、何がいいですか?」
「え…あ、じゃあ、ほのかと同じので…」
「解りました」
適当に、と言っても、適当がわからない…。むしろどこに目線をやればいいのかすら解らない。
「お待たせしました…って、座っててよかったのに…。コレ、最近ハマってるコーヒーです。あんまり苦いの得意じゃなくて、けどこれなら飲めるので、ちょっと大人になった気分になれるんです。宗ちゃんはコーヒー普通に飲めますか?」
「え…あ、はい、飲めますよ」
「やっぱり宗ちゃんは飲めますよね、だって大人っぽいし」
「いや…そんなことは…」
テーブルの上にコップを置いて彼女は座ったので、僕はとりあえずその場に正座をした。
「で、早速なんですけど、さっき言ってた宗ちゃんに見せたいものが…」
言いながら、彼女は本棚に手を伸ばした。
そこでやっと気づいた。彼女の部屋には本棚が多い。壁一面がほとんど本棚で埋まっている。