三次元彼氏。
僕が早瀬のスマホの在り処を伝えたところで、彼を引っ叩いた女子と目が合った。
「友達?」
「おう、滝本宗一郎、大学の友達第1号」
「すごい落ち着いてるね、早瀬もこれくらい落ち着いていいのに」
「俺落ち着いてるじゃん」
「冗談ヤメてよ」
仲良いな…、高校一緒だったのかな。
「あ、こいつ天音春瑠。俺の彼女」
僕の心の中を読み取ったかのように、早瀬が紹介した。
彼女だったの!?
「はじめまして、馬鹿早瀬がご迷惑おかけしてます」
「い、いえ…」
「馬鹿って言うな馬鹿って」
「ホントのことじゃん」
「ぅ、」
彼女さん、圧倒的権力者だな……。
「てか天音、何でさっきの女子に“ガッキー”って呼ばれてんの? 名前擦りもしてなくね」
「解んない、けどいいよ呼びやすいなら」
「いいのかよ」
言葉を交わしながら、帰り支度を進める早瀬。
「しゃー行くかー」
「待ちくたびれた」
「ごめんて」
「あ…じゃあ僕はこれで」
「おう、悪かったな騒がしくて」
どの口が言ってんの、とすかさず天音さんが突っ込む。
仲良さげな会話を背中に、僕は講義室を後にした。