三次元彼氏。




2階の講義室を出て階段を降りると、階段脇にあるテーブルのところに見覚えのある姿を見つけた。


小さな肩、焦げ茶色のミディアムヘア………




さっき、天音さんを追って講義室に入ってきた女子だ。

パソコンを開いて、何か作業をしているみたいだ。


特に話すこともないしそのまま素通りして帰ろうとした瞬間、彼女が頭を抱え出したのが横目に見えた。


……何か困ってるのかな。




「…あの、大丈夫ですか?」

気づいたら彼女の元へ引き返していた。


「…え…」

突然声を掛けられた彼女は、驚いたように僕を見上げた。



「…あ、さっきの人」

さっき一瞬だけ同じ空間に居ただけなのに、彼女は僕のことを覚えていたらしい。



「何か困ってるように見えたので」


「…あー…、これ、ちょっと意味が解らなくて」

彼女はそう言って、僕にパソコンの画面を見せてきた。

そこに映っていたのは、履修登録の画面。


これ、今日の1講目にやり方を教わって、既に登録を終えているはずのものだ。どうしてまだ終わってないんだ…。




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