三次元彼氏。
となりでプリントを広げていたほのかが、「質問していい?」と僕に声を掛けた。
「いいよ、どこ?」
「これって、宗ちゃんどうやって覚えた? 暗記?」
「あー…それはね」
言語学の内容。確か試験に出るって言ってた箇所。
自分でメモを残していた内容を交えながら説明をしたら、ほのかは目を輝かせた。
「そういうことかあ、宗ちゃん天才」
「そんなことないよ、大げさな」
ありがとう、と言って自分のプリントにメモを書き足すほのか。
「宗ちゃん、俺も質問」
「ん? どこ?」
なぜか僕を宗ちゃんと呼んだ早瀬が、目の前で挙手をした。
「どうやったら落単せずに2年生になれる? 俺もう文学部向いてねえ気がする…」
「……」
質問内容が重すぎて回答に困る…。
「…と、とりあえず、今目の前にある試験勉強を頑張るしか…」
「俺何も解んねえ、むしろ何が解んないのかも解んねえ……」
「……」
これは………手強い、どうしよう…。
「いつも講義真面目に受けずに寝てる早瀬が悪いんでしょ、ちゃんと受けてる滝本くんを少しは見習いなよ」
「……仰る通りです………」
項垂れる早瀬。新品さながらの綺麗なテキストを開き、空白が目立つプリントを横に広げ、頭を抱えた。