舞姫-遠い記憶が踊る影-

冬至祭


吹雪いてはいないけれど、しずしずと雪の降る日のこと。
暖炉の暖かさと、食後のコーヒーで体を温めていると窓の外からはしゃぎ声が聞こえてきた。

「僕がいちばーん!」
「まってよー」
「きゃーっ!」

隣に住むレイの家の子供たちだろう。
こんな時間に元気な声が聞こえるなんて、学校はすでに冬休みに入ったようだ。
雪を投げては逃げ、雪だるまを作ったり、そり滑りをしたり。
毎年同じように雪は降るのに、子供たちの遊びも昔から変わり映えがしない。
街中では、そろそろ年末年始の準備があふれるころだ。
ドアに飾られたリースに、ヤドリギ。
華やぐ街に心なしか浮足立つのは何も子供たちだけではない。
深い緑と鮮やかな赤いリボンに少しばかりの金色がアクセントになり、すっかりクリスマスをお祝いしている。
職人たちの技巧が光るオーナメントはこの時季だけに広場にできるマーケットで所狭しと並んでいる。
ガラス細工に木工、小さなものも大きなものも。
ろうそくの気流でクルクルと回るクリスマスピラミッドも大小様々ある。
夏場には劣るが、冬にも人の出入りがあるこの港町では、対外向けにもこういった飾りを扱っているのは有名で、雪の深い時節柄だと言うにも関わらずマーケットは連日賑わいを見せているようだった。

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