舞姫-遠い記憶が踊る影-

「ハンナ、カレン、ありがとな。メリークリスマス!良い年を」

皆がそう言って、帰って行く。
会計のラッシュが終わり、店内に残ったのは客は四人。
それも一つのグループで時間的にももうすぐに帰ることだろう。

「ハンナ、マリィにジェイムズも!ご苦労さんだったね、ありがとう。もう今日は大丈夫だろう。上がっていいよ」
「ありがとうございます」

みんなに一声かけると、ペコリと会釈が返ってくる。
隣にいたハンナは笑顔で応えてくれた。
アタシはカウンターの隅に置いておいた小さな箱を三つ取り、三人に手渡す。

「さ、これを。メリークリスマス、良い年を」
「わぁ!ありがとうございます。メリークリスマス、カレンさんも良い年を」
「ありがとう、カレンさん」
「俺たちも何か用意しておけばよかったなって、毎年言ってる気がする」

箱の中身は大したことはない、小さなお菓子だ。
ラッピングなんて言うほど大層なものでもないが、小さなリボンが付いている。

「お返しなんてされたら困っちまうくらいの物だからね。いつも白薔薇を手伝ってくれてありがとうの気持ちだから受け取っておくれ」

そう言うと、三人は笑顔で受け取ってタキにも声をかけて帰って行った。
タキは挨拶を交わした後、黙々と下げられた食器やグラスを洗っている。
本当によく働くものだ。

「よう、カレン。長々と邪魔したな」
「良いんだよ、ルドルフおじさん。今年もありがとう」
「おうよ、来年も宜しくな!良いクリスマスを」
「ルドルフも」

そうこうしている間に最後の客も帰って行った。
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