舞姫-遠い記憶が踊る影-

ギィ、ギィと風に看板が揺れていた。
今日は風が強く吹いている。
扉の札をOPENにするや店内は満席、なんてことは無いけれど徐々に店内は賑やかになっていく。

「いらっしゃい!あぁ、そっちの方が空いてるだろう。いつもので良いかい?」
「あぁ、頼むよ」

店の扉が音を立て、ひっきりなしに客を入れていく。
街が赤く染まり、夜の闇を纏い始めたころに仕事を終えた街のみんながやってくるのだ。
その頃に店は一気にざわめきを増して、アタシたち従業員はフル稼働だ。
ジェイムズが料理を作り、タキがドリンクを作り、ハンナにマリィ、それにアタシがそれらを配り回る。

「いらっしゃい、さっきサガイおじさんとマリエおばさんが来たよ。あっちの方にいるだろう」
「ありがとう、いつものを頼むよ」
「はいよ」

どうやらこの客の入が落ち着くまでは着替えに行くこと難しそうだ。
テーブルが埋まり、店内が少しばかり落ち着きを取り戻してきた頃にアタシは踊り子になるための準備をする。
だがこのところは有り難いことにテーブルが埋まって落ち着くまでに少々時間がかかるのだ。
料理の注文の合間に年始の踊りの話題を振られそれに応え、などとしていると以外にも時間が取られている。

「いらっしゃいませ!こちらの方も空いてますよ」
「ありがとう。あぁ、ワインを頼むよ」
「ありがとうございます!」

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