舞姫-遠い記憶が踊る影-

白薔薇の店主は、つまり、巫女の末裔。
舞は親から子へ。
この話も、親から子へ。

年始の舞は当時のままの舞だという。

『アタシは巫女の、歌で言うところの白魔女の子孫。巫女としての役を降りたときに妹は、姉の無事を祈り舞った。その舞はアタシの中にも息づいている。そしてね、タキ』

言わないほうが楽だとも、言ったほうが楽だとも一概には言えないけれど、取った行動は自分が選んだことなのだ、という責任は持たなくてはいけない。
タキにこれ以上の傷を負わせることになるかもしれないし、居なくなってしまうかもしれない。
タキの瞳はアタシがこれかは何を言うかなどとうに分かっていて、それでも受け入れてくれそうな暖かなものだった。

『タキはおそらく、赤魔女と、金の……晩の狼の子孫だろうとアタシは思ってる。その瞳が始めに金の色を出したのは狼の血が強かったのだろうよ。人の心の深淵を覗くのは赤魔女から引き継いだ神の気を読む力が働きかけたものかもしれない。そして家族の死をきっかけに、赤魔女の血が表に出た』
『そうか』

一言そっと呟いて、タキは瞳を閉じた。
そしてアタシの頭を抱き寄せて、頭上で『ありがとう』と声が聞こえた。


結果として、タキはお伽噺の延長のような話を受け入れてくれたのだが、あくまでもそれは結果論でしかない。
同時にアタシは一つの予感を覚えた。
祖先が感じたのと、同じ予感を。
何かがあればタキはここから居なくなるのだろう、と。

今はまだ、その予感に蓋をして、残された二人で過ごせる僅かな時間を抱きしめる。
ただ穏やかに、安らぎを。


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