……秘密があります
「初恋ではない。
 今も、好きかどうか確証もない。

 でも、お前が帯刀と結婚して、此処から居なくなるのは嫌だなと思ってしまったんだ。

 今までの人生、ずっとお前と居たから。
 お前が居ないと、それは俺の人生じゃないような気がするんだ」

 まあ、考えてみてくれ、と言って、士郎はお菓子が大量に入っていた透明なビニール袋の口を縛ると、こちらに向かい、投げてきた。

 うわっ、とよろけながらも受け取る。

 いやいや、まだ味見してないんですけど、と思いながら、顔を上げたが、士郎の部屋は、もうブラインドまで下りていた。

 確かに。
 シロさんが日常の中から消えるのは寂しいな。

 でも……と羽未はやはり、帯刀を思い浮かべてしまう。

 ……課長と暮らす日常か。

 それはそれで、ドキドキして落ち着かないな。

 ……うむ、と思いながら、下へ下りると、家族全員、窓を開けて、身を乗り出し、上を見上げていた。
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