……秘密があります

 また此処で目が覚めて、

「……そろそろ気が済んだか? 綾城羽未《あやき うみ》」
とか射殺《いころ》しそうな目で言われるに違いないと思ってしまう。

 だが、そんなことを考えている間にも、泣く父親とともに、羽未はバージンロードを進み、帯刀の許にたどり着いていた。

 いつも無表情な帯刀がティアードフリルのたっぷりあしらわれたウエディングドレスを着た羽未を見て、少し微笑んでくれた気がして。

 余計に夢ではないかと思ってしまう。

 父親が羽未から手を離しながら、
「……羽未をよろしくお願いします」
と小声で言い、帯刀が頷くのを見て、ちょっと泣きそうになったそのとき、教会の扉を誰かが跳ね開けた。

 誰だ、遅刻してきたのっ。

 そういえば、シロさんがまだ来てないっ、と思いながら振り向くと、スーツ姿の士郎が扉のところに立っていた。

 やっぱりシロさんか。
 遅刻したの、とその派手な登場にも羽未は呑気に思っていたが。

 士郎はつかつかと前に来た。
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