……秘密があります
そんな、それこそしょうもない話で羽未たちがすったもんだしている頃、仕事に戻っていた帯刀は大会議室で会議が始まるのを待っていた。
「しかし、なんだかんだで、いい奥さんっぽいよな、羽未ちゃん」
とたまたま隣だった芳賀が言ってくる。
……その、なんだかんだが気になるな、と思いながら、
「いやまあ……」
そうかもな、と言いかけて、帯刀は、はっ、と気づいた。
今此処で自慢したばっかりに、
『そうか、そんなにいい女か』
と言って、芳賀が羽未を持っていってしまったらどうしようっ?
なんせ、全女子社員がそのフェロモンに入社式でイチコロになったと噂の芳賀だ。
本気で迫られたら、幾ら羽未でも落ちるかもしれん、と帯刀は危ぶむ。
汗ばむ手で、手にしていた書類を強く握り、
「いや、羽未にいいところなどない」
と硬い表情で言ってしまい、
「……いや、お前ベッタリの女に興味はないから安心しろ。
お前たちのことは、いい意味で、われ鍋にとじ蓋だな、と思っている」
と呆れたような芳賀に言われてしまった。