……秘密があります
 


「じゃあ、羽未。
 ちょっと部長に呼ばれたから行くねー」

 会議室の片付けのあと。
 給湯室を出ながら阿佐子が言い、羽未は、はーい、と振り返りながら返事をする。

 ふふ。
 主婦となり、少しは家事に目覚めたのですよ、私は。

 いや、料理は相変わらずだし。

 お茶を沸かしたつもりで、麦茶のパックを入れずに、お湯を沸かし。

 氷を大量に入れた水筒にそれを注いで、今、温めたばかりのお湯を冷まして職場に持ってくるという愚行(ぐこう)頻繁(ひんぱん)に犯したりしているのだが。

 キッチンに磨きをかけるのは好きになっていた。

 シンクがピカピカになるのが快感というか。

 それで、職場に戻らなければと思いながらも、ついつい、給湯室のシンクを磨いていたとき、それに気づいた。
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