……秘密があります
「しょうがないですね。
 では、語りましょう」

「そんなすごい話なのか?」

「いえいえ。
 死ぬほど、しょうもない話です」
と言って、羽未は阿佐子に語り損ねた話の続きを語り出した。

「大学のとき、近所の人たちとうちの親戚の家に遊びに行ってたんですけど。
 帰ろうと思った日に、従兄弟の子が、もう一泊泊まっていきなよーって言い出して。

 どうしようかなと思っていたら、うちの親たちが」

 このうちの親たちと言うのは、うちの親と上杉士郎の親なのだが、まあ、そこのところは伏せておいた。

「『今日、あのロールケーキもらったのよ。
 賞味期限、今日までだから帰ってきなさいよ」
 って言ってきたんです。

 私たちはちょっと迷って、ロールケーキ食べたさに帰ることにしました。

 ところが、街中は降ってなかったのに、山を越えようとしたら、一面の銀世界で。

 山の中は、誰も人が入ってきた痕跡もない、美しい雪景色でした」

「お前、それは……」

 そう。
 人が立ち入ってはならない状態の山だったのだ。
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