……秘密があります
「気がついたときには、もう引き返すのも危険な感じで。
 スタッドレスだったんですけど、それくらいじゃ太刀打ちならない感じの雪でしたね。

 あの車の(わだち)のひとつもない雪景色を見たときには、これは親たちによるロールケーキを使った計画殺人なんじゃないかと思いましたよ」

「いや、平地は降ってなかったんなら、知らなかったんだろ、山がそんな状態なの」

 いや、そうなんですけどね……。

 ちなみに、山の入り口もまったく降ってなかったんですよ。

「あんな美しい雪景色は今まで見たことなかったんですけど。
 ……これからも見たくないです」

「大丈夫だったのか、それ」

「ええ。
 一回、橋の上で滑ったんですけど。

 ちょうどその頃には他の車も脇道から現れて、がっちり挟まれてたんですよ。

 でも、前の車がスパーン、と滑って、私たちの車もスパーン、と滑って、後ろの車もスパーンと同じペースで滑ったのでぶつからず、そのまま車は流れていきました」

 なんとまとめていいのかわからず、羽未は言った。

「雪山とロールケーキには気をつけろって話ですね」

 あと、さちこさん。

 いや、今、さちこさん関係ないか。

 でも、課長の顔を見ると、なんとなく、さちこさん、と思ってしまう。
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