……秘密があります
 


 今日は窓からでなく、玄関から士郎は上がってきた。

「ごめんごめん。
 帯刀と同期なんで、ちょっと感動の再会」
と今の騒ぎに対して、意味不明な言い訳を母たちにしてくれながら。

 だが、士郎が来ても、帯刀はすでに彼に対して興味を失っていた。

 さっき、
「上杉課長ではないです」
と士郎が自分の初めての相手ではないと教えたからだ。

「じゃあ、誰なんだ。
 いや、俺が知ってる相手とは限らないが……。

 お前は何故、今、そいつと付き合っていない。
 もう別れたのか?

 お前と付き合っておいて、別れる男なんて居るとも思えないが」
と帯刀は言ってきた。

 いやいや、買い被りすぎですよ、と赤くなりながら、羽未は言う。

「……酒の上の(あやま)ちだったらしく、相手の人が覚えていないからですよ」

 なにっ? と帯刀は今にも相手を斬り殺しそうな形相で言ってくる。
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