……秘密があります
士郎が話しかけても、その初めての相手が自分であるとは思わずに、帯刀は上の空だった。
士郎も帯刀が喧嘩の相手をしてくれないので、トーンダウンし、何故か、
『羽未は給食で残した卵で連絡帳をぐちゃぐちゃにして、クラスの男の子に、お前は男子かっ、と罵られていた』
というしょうもない話をして去っていこうとした。
「帯刀、お前も帰れ」
と士郎が促《うなが》したので、羽未は慌てて帯刀に訊いた。
ひとりで訊く勇気はなかったからだ。
「あのっ、さちこさんって誰ですか?」
「母だが?」
あっさり、さちこさんの正体は割れた……。
「……今、言いますか、それ」
とうっかり言って、いつ、言ったらよかったんだと言われてしまう。
いつって、あのときですよ。
貴方の記憶にない、貴方と私の初めての夜にですよ。