……秘密があります
そう。
羽未が帯刀の部屋で目覚めたのは、あれが初めてではない。
以前にも一度、同じことがあったのだ。
だいたい、酒が入ってくると、みな、毎度同じ話をし始める。
あのときも、酔った楡崎が、
「誰か春成課長を懐柔してこい、女子っ」
と言い出して。
で、目覚めたら、春成帯刀の部屋だったのだ。
だから、今回はすぐ、そこが帯刀の部屋だとわかった。
そして、前回と同じように自分がそこに居た痕跡をすべて消し去り、遁走《とんそう》しようとしたのだが。
今回は早くに目覚めてしまった帯刀に気づかれてしまったのだ。
いや~、すべての原因は、さちこさんですよ、さちこさん。
……お母様だったのですか。
でも、あんなときに寝言で呼ぶとは思わないじゃないですか。
ねえ……。
帯刀と羽未の一度目の夜。
初めてだったのに、寝言で別の女性の名前を呼ばれ、羽未は自分が居た証拠をすべて消し去り、泣いて帰ったのだ。
あのとき、追求するべきだったか。
いや、でも、そんな勇気なかったし。
いろいろ思い出している羽未を何故か帯刀がじっと見下ろしている。
課長、もしや、なにか思い出しそうになってます?
と思いながら、羽未はその視線を受け流すように、ゆる~っと他所を向く。
羽未が帯刀の部屋で目覚めたのは、あれが初めてではない。
以前にも一度、同じことがあったのだ。
だいたい、酒が入ってくると、みな、毎度同じ話をし始める。
あのときも、酔った楡崎が、
「誰か春成課長を懐柔してこい、女子っ」
と言い出して。
で、目覚めたら、春成帯刀の部屋だったのだ。
だから、今回はすぐ、そこが帯刀の部屋だとわかった。
そして、前回と同じように自分がそこに居た痕跡をすべて消し去り、遁走《とんそう》しようとしたのだが。
今回は早くに目覚めてしまった帯刀に気づかれてしまったのだ。
いや~、すべての原因は、さちこさんですよ、さちこさん。
……お母様だったのですか。
でも、あんなときに寝言で呼ぶとは思わないじゃないですか。
ねえ……。
帯刀と羽未の一度目の夜。
初めてだったのに、寝言で別の女性の名前を呼ばれ、羽未は自分が居た証拠をすべて消し去り、泣いて帰ったのだ。
あのとき、追求するべきだったか。
いや、でも、そんな勇気なかったし。
いろいろ思い出している羽未を何故か帯刀がじっと見下ろしている。
課長、もしや、なにか思い出しそうになってます?
と思いながら、羽未はその視線を受け流すように、ゆる~っと他所を向く。