……秘密があります
 ……言えない、今更。

 誰か課長を懐柔(かいじゅう)してこいと楡崎(にれざき)さんが二度言って。

 なにがどうなって、ああなったのかわからないけど。

 二度とも私が課長とあんなことになってるなんて。

 まるで、私が課長をすごく好きで、他の人に行かせたくないから、自分から行っちゃったみたいじゃないですか、と思いながら、羽未は怪しく視線を彷徨(さまよ)わせる。

 ……ほんと、目が覚めたとき、過去に時間が飛んだのかと思いましたよ、などと考えていたとき、士郎が言った。

「さちこさんって、お袋さんだったのか。
 お前、マザコンか?」

 そうだ。
 今度はそっちが心配……と羽未は思う。

 実は、帯刀が寝言で、さちこさん、と呼んだのにはわけがあったのだが、もちろん、羽未は知る(よし)もなかった。
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