君のキスが狂わせるから
ようやく江ノ島に到着した頃には、外はもう真っ暗になりかけていた。
駅を出てすぐの橋の上から海の方を眺めると、うっすら朱に染められた雲がたなびいている。
島の方はすでに人工の明かりが灯っていて、星のように煌めいていた。
「綺麗。海に来たの、すごく久しぶり」
潮の香りを味わいながら、深呼吸すると、深瀬くんが肩の触れそうな距離に立った。
「一緒に来てくれて、ありがとうございます。彼氏に怒られたら俺のせいにしてください」
「ふふっ、そういう人がいたらいいんだけどね……」
「あ、ってことは今フリーなんですか」
演技でも無い様子で尋ねられると、その質問にどう返したらいいか迷う。
(いないって即答したら、モテないのを証明するみたいな感じだし)
それでも私は嘘をつく方法も分からず、正直に答えた。
「まあ……そうだね。第一、彼氏がいたらここに来てないよ」
「へえ、真面目なんですね」
低いトーンで呟いた生意気な口調に、思わず笑いそうになる。
すると深瀬くんは軽くムッとした顔で私を見た。
「なんで笑うんですか。子どもっぽかったですか?」
「そういうんじゃないけど。深瀬くんも、相当に真面目なのになーって思って」
電車で私に触れまいと頑張る深瀬くんの姿は、真面目そのものだった。
(恋人同士でもないのに、ひっついたら不自然だものね)
その配慮は本当に嬉しかったから、そう答えた。
深瀬くんも私の笑いに釣られたように口元を緩めると、少し離れた場所にある砂浜を眺めた。
「降りてみましょうか」
「うん」
「暗いと危ないので、手、繋いでいいですか?」
「あ……うん」
多少動揺しつつも頷くと、彼は慣れた様子で私の手をすっと握った。
思った以上に大きな手に、鼓動が驚くほど跳ね上がる。
(彼氏がいないなら触れてもオッケーって思ったのかな)
彼のこだわりがよくわからない。
それでも握られた手はすごく温かくて、私は彼の手に引かれるまま砂浜へと降りた。
駅を出てすぐの橋の上から海の方を眺めると、うっすら朱に染められた雲がたなびいている。
島の方はすでに人工の明かりが灯っていて、星のように煌めいていた。
「綺麗。海に来たの、すごく久しぶり」
潮の香りを味わいながら、深呼吸すると、深瀬くんが肩の触れそうな距離に立った。
「一緒に来てくれて、ありがとうございます。彼氏に怒られたら俺のせいにしてください」
「ふふっ、そういう人がいたらいいんだけどね……」
「あ、ってことは今フリーなんですか」
演技でも無い様子で尋ねられると、その質問にどう返したらいいか迷う。
(いないって即答したら、モテないのを証明するみたいな感じだし)
それでも私は嘘をつく方法も分からず、正直に答えた。
「まあ……そうだね。第一、彼氏がいたらここに来てないよ」
「へえ、真面目なんですね」
低いトーンで呟いた生意気な口調に、思わず笑いそうになる。
すると深瀬くんは軽くムッとした顔で私を見た。
「なんで笑うんですか。子どもっぽかったですか?」
「そういうんじゃないけど。深瀬くんも、相当に真面目なのになーって思って」
電車で私に触れまいと頑張る深瀬くんの姿は、真面目そのものだった。
(恋人同士でもないのに、ひっついたら不自然だものね)
その配慮は本当に嬉しかったから、そう答えた。
深瀬くんも私の笑いに釣られたように口元を緩めると、少し離れた場所にある砂浜を眺めた。
「降りてみましょうか」
「うん」
「暗いと危ないので、手、繋いでいいですか?」
「あ……うん」
多少動揺しつつも頷くと、彼は慣れた様子で私の手をすっと握った。
思った以上に大きな手に、鼓動が驚くほど跳ね上がる。
(彼氏がいないなら触れてもオッケーって思ったのかな)
彼のこだわりがよくわからない。
それでも握られた手はすごく温かくて、私は彼の手に引かれるまま砂浜へと降りた。