君のキスが狂わせるから
突然の言葉に、どう切り返していいか分からない。
「それって……告白みたいに聞こえるよ」
こんな返しで、今は精一杯だ。
深瀬くんは私が表情を曇らせたことに戸惑っている。
「告白したつもりですけど?」
「嘘。だって私の年齢じゃあ、深瀬くんにとって対象外のはずじゃ…」
「あ……」
すぐピンと来たようで、深瀬くんは困ったように髪を掻き上げた。
「村上さんですね」
私も嘘をつくこともできず、頷いた。
「美桜先輩からは、年齢で断られたって聞いたよ」
「……誤解されるのを覚悟で言いますけど。俺、村上さんみたいな方から誘われることが多くて、遠回しじゃない断り方をしてるんです」
(まあ…深瀬くんくらいになると、そうだろうな)
「その断り方が、年齢制限ってこと?」
「失礼だとは思いますけど、この理由だと大抵の方はすぐに諦めてくれるので」
「……そうだろうね」
この理由については、特に驚くことではなかった。
実際、年齢を理由に断られたことで、美緒先輩は諦めたようだし。
「じゃあ、どうして私にさっきみたいなこと言うの?」
「それは……年齢のことは単なる作った理由に過ぎないからです。だいたい、俺が失恋した前の彼女は40代だったので」
「え…っ」
(私より年上!?)
「俺、実際は年齢で人を見たことないんですよ」
苦笑しながら、グラスの中身を全て空にした。
「何歳でも俺がいいなと思った人を好きになります」
「でも、年齢が違いすぎると話題が合わないとかないの?」
「ないです」
深瀬くんはそうキッパリ言い切った。
「素敵な人は年齢とか関係ないですから」
「……そっか。すごく素敵な方と付き合ってたんだね」
(40代で深瀬くんのような男性を夢中にさせるなんて、想像もつかないほど素敵な人だったんだろうな)
私の言葉に、彼は寂しそうな目でコップの縁をなぞりながら微笑んだ。
「付き合ってたっていうか……付き合ってもらってたっていうか。相手は俺なんか要らないくらい沢山の人に囲まれてて、いつも楽しげな人でしたから」
憂いの表情がこんなに似合う人がいるだろうか。
寂しげな彼は、ぎゅっとせずにはいられない愛おしさを感じさせる。
(いけない、いけない。深瀬くんを前にすると、冷静さがすぐにどこかへ行きそうになる)
私は首を振り、呼吸を整えてから言葉を発した。
「その彼女さん、かなり活動的な方だったんだね」
「そうですね。そうそう、彼女もヨガをやってたんですよ」
「へえ」
「そういうところは、愛原さんと通じるような空気がありました」
(ヨガをやっている人も、色々だからなあ)
共通点を見つけて喜ばれるのもちょっと複雑な気分だ。
深瀬くんの元カノと私では、明らかに違うタイプの女性に感じるから。
「それって……告白みたいに聞こえるよ」
こんな返しで、今は精一杯だ。
深瀬くんは私が表情を曇らせたことに戸惑っている。
「告白したつもりですけど?」
「嘘。だって私の年齢じゃあ、深瀬くんにとって対象外のはずじゃ…」
「あ……」
すぐピンと来たようで、深瀬くんは困ったように髪を掻き上げた。
「村上さんですね」
私も嘘をつくこともできず、頷いた。
「美桜先輩からは、年齢で断られたって聞いたよ」
「……誤解されるのを覚悟で言いますけど。俺、村上さんみたいな方から誘われることが多くて、遠回しじゃない断り方をしてるんです」
(まあ…深瀬くんくらいになると、そうだろうな)
「その断り方が、年齢制限ってこと?」
「失礼だとは思いますけど、この理由だと大抵の方はすぐに諦めてくれるので」
「……そうだろうね」
この理由については、特に驚くことではなかった。
実際、年齢を理由に断られたことで、美緒先輩は諦めたようだし。
「じゃあ、どうして私にさっきみたいなこと言うの?」
「それは……年齢のことは単なる作った理由に過ぎないからです。だいたい、俺が失恋した前の彼女は40代だったので」
「え…っ」
(私より年上!?)
「俺、実際は年齢で人を見たことないんですよ」
苦笑しながら、グラスの中身を全て空にした。
「何歳でも俺がいいなと思った人を好きになります」
「でも、年齢が違いすぎると話題が合わないとかないの?」
「ないです」
深瀬くんはそうキッパリ言い切った。
「素敵な人は年齢とか関係ないですから」
「……そっか。すごく素敵な方と付き合ってたんだね」
(40代で深瀬くんのような男性を夢中にさせるなんて、想像もつかないほど素敵な人だったんだろうな)
私の言葉に、彼は寂しそうな目でコップの縁をなぞりながら微笑んだ。
「付き合ってたっていうか……付き合ってもらってたっていうか。相手は俺なんか要らないくらい沢山の人に囲まれてて、いつも楽しげな人でしたから」
憂いの表情がこんなに似合う人がいるだろうか。
寂しげな彼は、ぎゅっとせずにはいられない愛おしさを感じさせる。
(いけない、いけない。深瀬くんを前にすると、冷静さがすぐにどこかへ行きそうになる)
私は首を振り、呼吸を整えてから言葉を発した。
「その彼女さん、かなり活動的な方だったんだね」
「そうですね。そうそう、彼女もヨガをやってたんですよ」
「へえ」
「そういうところは、愛原さんと通じるような空気がありました」
(ヨガをやっている人も、色々だからなあ)
共通点を見つけて喜ばれるのもちょっと複雑な気分だ。
深瀬くんの元カノと私では、明らかに違うタイプの女性に感じるから。