私立秀麗華美学園
「……は? あ、あたし?」


自分を指して咲は問いかけた。


「そ、あんただよ、風來咲ちゃん」


なぜにフルネームを知っている。と、誰もが思う中、口に出すより先に本人が答えを出した。


「俺ー知ってっかなあ? お前らの学年の、笠井進の兄貴なんだけど。あいつの1年の時のクラス写真で、咲ちゃん見てさあー」


確かに咲たちと笠井は去年同じクラスだった。
相変わらず笠井兄はへらへらと笑っている。気づくと、雄吾が物凄い形相で、やつをにらみつけていた。


「は、はあ……」

「で? 一体何のご用事でしょうか?」


後ずさりをする咲に代わり、ゆうかが笑顔で尋ねた。


「んー用っつかなー、よろしくーみたいな? 俺咲ちゃんみたいな子、タイプなんだよねー」


笠井兄は、笠井弟よりも更にやっかいなやつだった。
言うなり咲の肩に腕をまわし始めたのだ。


「ちょ、やめえや!」

「まあまあ怒らんとー」


咲の口調を真似た笠井兄の関西弁は、関西弁をよく知らない俺すらを苛立たせるものがあった。


「……お取り込み中、悪いんだが」


ついに、明らかにオーラの違う雄吾が笠井兄に声をかけた。
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