私立秀麗華美学園
「さあさあさあ、いらっしゃいませ! キャラメルの早食い大会ですよ! 優勝賞品は、豪華アクセサリーの袋詰め!」


店頭で叫んでいるのは真二、の姫、馬渕未樹だ。威勢のいい声に、教室の前を行きかう人の多くは足を止めている。


「さすが未樹だよなあ」

「へいへい」


真二はというと、自分の姫を眺めながら、俺の隣で頬をゆるめている。
にやけたその顔を見ていると、自らの行動をかえりみたくなる。もしかして俺、いっつもこんな顔してんのかな。


「呼び込み係ー、あと3人よ」


教室の戸から顔を出し、ゆうかが言った。

貸衣装屋を傘下に入れた会社の御曹司がクラスにいたので、シフトの時は全員制服を着用している。咲が着ていたものほどではないが、うちの制服も、相当二次元っぽい。

ひらっひらのストライプのブラウスに、薄くて柔らかいコットン生地のスカート。それにはパニエとやらがついていて、大きく広がるようになっている。
それらに私服を合わせて着用しているのだが、とりあえず今日のゆうかは可愛すぎる。

黒のカーディガンを合わせてエプロンを着けたゆうかは壮絶に可愛い。直視したら目が焦げるかと思った。無理やり笠井とシフトをずらしたのは大正解だった。


3人、というのは、キャラメル早食い大会に参加できる残り人数だ。1回の参加人数は12人。席が埋まり次第スタートする。


「りょうかーい」


喧騒の中、叫んで返事をする。ごてごてに盛られた看板を担ぎ直し、真二の背中をばしんと叩いた。

残り3人ということで、3人組をターゲットに呼び込みを始めようとした、その時だ。
人ごみの中、見覚えのある奴らを発見してしまった。


「革ジャン!」


テスト中のあの騒動、如月眞子信者のヤンキーに服属していたあいつだ。

傍らには、やはりあの熊之崎がいた。この前と違って他のやつらはおらず2人で連れ立って歩いていたのだが、とんでもなく不可解なことに、彼らは同じ服装をしていた。

それも、とび職の作業着を身につけていたのである。
しかもド派手な紫の。
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