私立秀麗華美学園
「おあー!」

「おぬしは先日の!」


俺のそばに来た2人に、真二は怯えた表情を見せた。まあ確かにいかついわな。この格好じゃ。


「なんすか、その口調は」

「眞子様、今度時代劇の主役に抜擢されたんすよ」

「そうなんじゃ。練習の日々は大変じゃった」


練習したのかよ。今度は似合い過ぎていて、不自然さが全くない。なんちゃって大阪弁を改めたのは正解だ。


「で、なんでここに?」

「見てわかるっしょ。俺、これでも大工の端くれなんすよ。まだバイトっすけど。ボスは棟梁なんすよ。今日は、門の設置について助言の為に来た感じっす」


じょ、助言。なんと、見くびっていたがこいつらは、立派に社会へ貢献していたのだ。
ニートとフリーターって違うのかな、やっぱり。よくわからないがとりあえず心の中で小さく謝る。


「ところで、和人さんはなんなんすかその格好」

「ウエイターもどきだよ。そうだ、今帰りか? うちのクラスの出し物、参加してけよ!」


そうして俺は強引に、2人を受付に連れてきた。教室に入ってきた異色の2人を見て、ゆうかを筆頭にクラスがどよめく。


「い、いいんすか俺ら……」

「いーっていーって、ほら、ここに記名。年齢もな」


革ジャン……じゃなくって、そうだ、弓浜。下の名前は潔というらしい。年はタメだった。より一層親近感が湧いてくる。


「お久しぶりね」

「おお、そちらの者も。先日の無礼な振る舞い、どうにか容赦してくれぬか」


ゆうかが声をかける。弓浜の手から熊之崎にペンが渡り、横向きの用紙にわざわざ縦書きで書き始めた。熊之崎琥次郎というらしい。無駄にかっこいいな。


「それじゃ、こちらへ」


他の生徒に誘導され、やつらは席へ。あと1人だ。
ちんまりと座る熊之崎琥次郎を見て微笑ましく思いながら廊下に出ようとすると、真二と馬渕が最後のひとりを連れて、教室に入って来た。


「……あら、あんたたち」


顔を合わせてびっくり。キャラメル早食い大会(第4回戦)の最後のエントリーは、雄吾を崇拝するじゃじゃ馬娘、水沢紗依香だった。
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