私立秀麗華美学園
そんな感じで挑戦者たちはそれぞれキャラメルと格闘し、給水係が忙しく水を注いで回り、計測係がラスト半分を告げた頃、ミセスたちは軽やかにリタイアを表明した。

おほほほと笑いながら立ち上がり、そろそろ結構ですわ、とおっしゃったのだ。
ああ、結構ですか、みたいな雰囲気で俺たちはリタイアを受け付けた。


そして残りは6人だ。中坊とOG2人は明らかにペースが落ちてきている。
弓浜は戦闘離脱。ブレンド水が気に入ったらしく、キャラメルを2、3mmかじっては水を入れてもらっている。以外と舌が肥えているのかもしれない。


「次!」


ヒステリックな水沢の声がするやいなや、次の皿が目の前に置かれた。教室がどよめく。
なんと水沢は、たった5分弱の時間で、あの最強のキャラメルを10個も胃の中に収めたのだ。
おまけで置かれたフランボワーズ等の小さなフルーツまで食べ尽くしている。失恋じゃじゃ馬、恐るべし。


「ふん、結果はもう、決まったようね」


水沢は熊之崎の皿を一瞥すると鼻で笑って言った。

ボスの皿には、キャラメルがまだまるまる3つ残っている。いや、それでもかなりのハイペースではあるのだが。熊之崎は悔しそうに顔をひきつらせた。


「はが、ほふぐばはばがんほぎゃ!」


熊之崎はキャラメルで満たされた口でなんとか言葉を発しようとするが、全くもって意味不明だ。


「せいぜいあがくがいいわ!」


水沢は不敵な笑みを浮かべて早食い再開。熊之崎はグラスを傾けながら喘ぐ。

ちなみに弓浜はというと、給水係の女の子と仲良くなっていた。もうお前、リタイアしろよ。


「ラスト2分です!」


計測係が手を挙げて知らせる。水沢はラストスパートに入った。

そしてそれを見て、さすがに熊之崎も激しく焦りを感じ始めたらしく、いったん口の中のものを全て飲み込むと、食べながら思案していたのだろうか、奥の手を使い始めた。
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