私立秀麗華美学園
挑戦者たちは全員が全員、息も絶え絶えといった様子で、水のグラスを握り締めて机に突っ伏していた。

先にリタイアした初等部のガキどもやマダムたちも一緒になって拍手をしている。


拍手が鳴りやむと同時に集計係が飛び出し、各皿に残ったキャラメルの数を数え始めた。
とは言え、空の皿がある時点で、優勝者だけは一目瞭然だ。


「結果発表!」


数が進行係に即座に伝えられ、全ての視線がそちらへ集中する。
豪奢なマイクを握った司会者は、改まってコホンとひとつ乾いたせきをした。


「第1位、完食数16個! 水沢紗依香さん!」


じゅ、じゅうろっこ。教室中がから歓声が上がり、後ろの黒板の上に貼られた、最高完食数の記録が書き代えられた。
ちなみにこの回以前の最高数は8個。ダブルスコアである。


水沢はすっくと立ち上がるとガッツポーズを掲げて、よっしゃあああ! と叫んだ。
水沢家のお嬢様としてこの立ち居振る舞いはどうなのかと思うが、勝者としてはふさわしいものだった。


「第2位は同率で2名! 完食数9個で、熊之崎さんと、守永さん!」


途端にきゃああああっと甲高い声が上がって、一番端に座っていた中坊が椅子から飛び上がった。
やつが守永か。彼女が顔を綻ばせて抱きつく。

人の数だけストーリーがあるものなのだ。


「……わしの、完敗じゃ」


熊之崎は机に両手をついて、がっくりと頭を垂れた。悔しさからだろう、全身が打ち震えている。


「ぬしの大記録には、遠く及ばんかった」

「まあね!」


鼻息荒く、ふんぞり返る水沢。え、今そういうとこじゃなくないですか。思わず声に出して突っ込みかけたその時、水沢は表情を変えて言った。


「ま、でも」


唇を噛みしめた熊之崎が、顔を上げて水沢を見た。
< 144 / 603 >

この作品をシェア

pagetop