私立秀麗華美学園
「わたしに勝とうなんざ10年早いと言いたいところだけど、あんたもやるじゃない! ライバルとして、認めるわ!」


そう言って水沢は、ずいっと片手を差し出した。


「お、おお、おおお……なんと寛大な!」


熊之崎は男泣きをしながら、がっしりと手を握り返した。
美しく、奇怪な友情の誕生に、平常心を失った俺たちはまたしても盛大な拍手を送った。

おそらく教室の中に、水沢のセリフがとんでもなく上から目線だということに気付いている者はいない。
いや、もしかすると熊之崎の隣に座る彼になら、期待が持てるかもしれない。
しかし彼はただ黙って生ぬるい視線を投げるのみだった。


そうして2人は一通り友情を確かめ合うと、満足げに席に着いた。
4位、5位の発表はつつがなく終わる。OGとおぼしき2人がほとんど同じ記録だった。

結局リタイアを表明しなかった6人中、弓浜以外の5人が賞品をゲットしたというわけだ。


「ではこれにて、第四回大会を、終了したいと思います! 入賞者の5名には、アクセサリーの袋詰めの権利が与えられます! 最後にもう一度、盛大な拍手で挑戦者の方々のご健闘を称えましょう!」


それぞれの順位に対応した大きさの袋が5人に配られ、同時に他の7人には参加賞として、普通サイズのキャラメルが一箱ずつ渡された。
あの粘着地獄から帰還した人々にとってキャラメルは、憎しみをぶつける対象でしかないと思うのだが。


5人は大箱から思い思いにアクセサリーをつかみだすと、袋にぎゅうぎゅうと詰め始めた。
ただ一人、最も大きな袋を持った水沢は、よく品定めをして決めた指輪4つだけをすかすかの袋に入れると、司会者に向かって言った。


「わたしはこれでいいわ。賞品なんかにもともと興味はなかったし。それよりも、余っているならキャラメルの方をくださらないかしら」


……まだ食うか。
司会者にいくつかのキャラメルを手渡されると、水沢はほくほくとした表情で戻って来た。
< 145 / 603 >

この作品をシェア

pagetop