私立秀麗華美学園
しずしずと進める歩みの一歩一歩に、俺を引き離そうとする意思を感じる。


ゆうかの俺に対するこういう扱いは、今に始まったことではないが……。


にしても、最近はより酷い気がしてならない。
酷くなったのが俺の被害妄想ならいいのだが。よかないか。



行動を共にして、9年間。
今になっていきなり恋愛感情が芽生えてくれるとか、そんな馬鹿な期待は抱いていない。

しかしゆうかには俺が一応の婚約者であるという認識すらあるとは思えない。
いや、あるわけないか。


どう、思われているのだろう。
それがわかれば全国の健全な恋する乙女に男児、誰も苦労しねえってか。


俺が今更ゆうかを諦めるなんて、個人的にも家柄的にも無理な話。
形だけでも将来を約束しているというのだから尚更だ。


「……ごめんな」


ネイビーのブレザーの背中に、小さく呟いた。


ゆうかは勉強にしろ運動にしろ笠井に負けず劣らずよくできる。
何に関しても才能が豊かで、幼い頃から周りにかけられる期待には、期待以上の成績や記録を持って応えていた。

まさに、才色兼備。
とりあえずツンデレ体質はおいとくとして。


そんなゆうかと笠井がお似合いなのは火を見るより明らかだ。
ついでに俺から見て、笠井がゆうかに好意を抱いていない可能性は0に等しい。


しかし、PAK、姫と騎士というやっかいな制度がゆうかの恋路を邪魔している。
つまりは、だ。

まさに俺という存在が、ゆうかの恋路を邪魔している。

うっとうしく思わて当然なんだよな。


そんなことを考えながらゆうかの後ろ姿を目で追い、1人教室へ入った。













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