私立秀麗華美学園
いやいやいや、白上、ですか。白上? え、しらかみ……いや、ちょっと待て。いやでもまさか。まさか、この男――
「あの、まさかとは思うんですけど」
「もちろん、学園長の、孫でーす!」
ぐはあっ!
こんなちゃらそうなふざけた男が、我らが学園長様の親族だなんて、おそれ多き事実……と、心の中で体裁を整えつつも、妙に納得してしまう自分がいたことは否めなかった。
「なるほどねえ……だから、ここに就職できたってわけね」
「世の中コネだぜ、コネ」
にやつきながらそんな身もふたもないことを言うのはやめてください。
「ってことは、自分こそかなりのおぼっちゃんなんじゃ」
「まーな。一応ここのOBだし。ちょうどお前らぐらいの時だったかな、こーゆー生活が窮屈に思えたんだよなー。高校辞めてホストになって自分で稼ぐって言い出した時にゃ、まさに勘当される寸前だったぜ」
ここの生徒がいきなりホストって、そりゃ勘当されなかったことの方が不思議です。
と言ってもあの学園長のことだ。急に将来設計を語り始めた孫を気持ちよく送り出してから、ほすとってどんな職業なの? なんて言ってそうで怖い。リアルに怖い。
「ま、この仕事に就く時に、母ちゃんに散々怒られたし。今じゃ反省もしてるが、あのままここに通ってちゃ、俺、潰れてたと思うんだよなあ。ホストって仕事もいい人生経験だったと思ってるよ。そういやなんかまた、変な制度できただろ? 婚約者同士にやたらと都合のいいやつ。……あ、もしかしてお前ら」
「ええ、そうなんです」
ゆうかは答えて、少しだけ俺に寄り添うようにした。初めて見た行動だった。俺は感動で口もきけなかった。
青と赤の混在した空。マーブルの空色はやがてひとつの色に向かっていく。青でも赤でもない色に。
夕暮れ時の薔薇園、俺たちの関係はまたもやこの場所で、ひっそりと展開を始めることになるのだった。
「あの、まさかとは思うんですけど」
「もちろん、学園長の、孫でーす!」
ぐはあっ!
こんなちゃらそうなふざけた男が、我らが学園長様の親族だなんて、おそれ多き事実……と、心の中で体裁を整えつつも、妙に納得してしまう自分がいたことは否めなかった。
「なるほどねえ……だから、ここに就職できたってわけね」
「世の中コネだぜ、コネ」
にやつきながらそんな身もふたもないことを言うのはやめてください。
「ってことは、自分こそかなりのおぼっちゃんなんじゃ」
「まーな。一応ここのOBだし。ちょうどお前らぐらいの時だったかな、こーゆー生活が窮屈に思えたんだよなー。高校辞めてホストになって自分で稼ぐって言い出した時にゃ、まさに勘当される寸前だったぜ」
ここの生徒がいきなりホストって、そりゃ勘当されなかったことの方が不思議です。
と言ってもあの学園長のことだ。急に将来設計を語り始めた孫を気持ちよく送り出してから、ほすとってどんな職業なの? なんて言ってそうで怖い。リアルに怖い。
「ま、この仕事に就く時に、母ちゃんに散々怒られたし。今じゃ反省もしてるが、あのままここに通ってちゃ、俺、潰れてたと思うんだよなあ。ホストって仕事もいい人生経験だったと思ってるよ。そういやなんかまた、変な制度できただろ? 婚約者同士にやたらと都合のいいやつ。……あ、もしかしてお前ら」
「ええ、そうなんです」
ゆうかは答えて、少しだけ俺に寄り添うようにした。初めて見た行動だった。俺は感動で口もきけなかった。
青と赤の混在した空。マーブルの空色はやがてひとつの色に向かっていく。青でも赤でもない色に。
夕暮れ時の薔薇園、俺たちの関係はまたもやこの場所で、ひっそりと展開を始めることになるのだった。