私立秀麗華美学園
「ほーう。それでさっきはあーゆーことに」


……この男、自分のしたことを踏まえた上でこんなにやけ顔をしているのだろうか。

ゆうかが苦笑して俺を見上げる。俺も苦笑を返す。
まあ、あん時は照れに照れてたし、どうしていいかわからないぐらいだったから、助かったと言えば助かったわけだよな。この男の奇行のおかげで。

ゆうかは校舎の方を見やってから言った。


「どうする? 私も和人も、親は来てないわけだし、挨拶する人には、まわってる間に大体会っちゃったし……どうせだから、ここで話していかない? 「しらかみ学園」の、先輩の話も、聞きたいしね」

「多少不本意だけど、そうだな」

「おーっしゃ大歓迎! なんでも聞きたまえ、後輩たちよ。ついでに肥料まきを手伝え!」


そうして俺たちは、交流会の時間を薔薇園で過ごすことにした。
交流会は強制参加でもないし、生徒の参加率は大抵6割ぐらいだ。何よりこのままこの空間で、この空気を感じ続けて、記憶に刷り込んでしまいたかった。この先ずっと、忘れられないぐらいに。

記念すべきこの日。6月の終わり、梅雨時期にも関わらず晴天に恵まれた学園祭。

今日は「愛され」記念日なのだ。



















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