私立秀麗華美学園
急須から緑茶を注ぎゆうかの隣に座った。


「プリント、終わった?」


ゆうかの前には空の皿の乗ったトレーがあった。


「一応。プリント、明日返しまーす」

「キューピッドの話なあー、あたしら話聞いて来てんけど、やっぱり普通につきあいたいやってさ」


キューピッドと言えど単純に両思いが依頼ではないケースも稀にあるのだ。

告白のチャンスだけ欲しいとか。
好きな人探ってくれとか。
騎士の浮気調査、とか……。

学園が学園なだけに個人名は伏せておくことにする。


「俺は堂本の友達の話を聞けた。憶測するに、失恋直後らしい」


次に雄吾が淡々とした口調で告げた。

聞けたとは言うが、恐らく盗み聞きだ。真正面から尋ねたんじゃすぐに感づかれてしまう。


「で、あとはいつもと同じパターンね」

「へーい」


いつものパターンを簡単に説明すると、
依頼主と友人の協力を得る→相手の好みの何らかの方法(主に咲の直感)で探る→依頼主の何らかの方法(主に着せ替え人形の等身大版)で変身させ、告白。


それでいいのかキューピッド。いささか単純すぎやしないか。

とか何とか誰かさん(いささかは紳士版笠井の口癖)に言われようともしかたがない。


実際成功率はそう大したこともないが、何せ依頼料が依頼料。大抵の場合は許していただけるのである。

こっちも大した志があってやっているわけじゃないが、依頼主の方でも、興味本位で、みたいなケースが結構あるのだろう。
学校の、名も知れぬキューピッド集団。やる方もやる方なら頼む方も頼む方。高校生なんて、17歳なんて意外と、そんなものなのだ。
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