私立秀麗華美学園
「告白、三松さんはできれば相手からがええって。まあ、時と場合によるやろうけど」

「消極的な依頼主だな」


そう言ったあと、雄吾は正面の俺のトレーを睨みだした。


「な、何だよ。うどん、欲しいのか?」

んなわけないが、箸でうどんを一筋つまんで雄吾の目の前で揺らしてみた。
しかし雄吾の視線は変わらず、汁が飛び散っただけだった。


「栄養が、ない」

「うわーほんと。和人、考えて選びなさいよ」

「だからちびなんやーん」


咲がケタケタと笑いながら言う。

確かに俺は背が高くない。「低い」ではなく「高くない」。恐らく雄吾より10cm、笠井よりも5cmは低いだろう。

しかしこの中で最小……最ちびの咲に言われる筋合いはないはずだ。
つーか俺はゆうかよりも高ければそれでいいのだ。

俺は平静を装い、すうどんの汁をぐっと飲み干した。



それからまた打ち合わせという名の雑談をして、それぞれの寮へ戻った。


「おい、和人」


部屋へ入るなり雄吾が言った。
俺はドアを閉め自分のベッドに腰をおろした。


「何だよ」


雄吾の鋭い光を携えた瞳が、俺を見つめて……いるわけではなく、ただ単に見ている。いや、どちらかというと軽く睨んでいる。

何だ何だこの沈黙は。

雄吾の瞳を見返してみた。
基本グレーで光の当たり方によってセピア色にも見え、明るい蒼黒のようでもある。
ミスターミステリアス。やっぱこいつ、美形だよな。


寮の一室で男同士が視線を絡ませていると思うと鳥肌がたったので、視線を逸らした。
なんか、負けた気がする。
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