私立秀麗華美学園
「何かあったろ」


沈黙の末に雄吾は口の端に笑みらしきものを浮かべて言った。外れではないことを確信した表情だ。


「ななな何かって何だよ」

「はい自爆」


雄吾はふっと鼻で笑った。似たような仕草でも笠井の時ほど腹が立たないのは、やっぱり問題があるのは仕草ではなく人間だからだ。


「ゆうか絡みか?」

「……ああ」


すんなりと、返事をした。基本俺たちに関して……いや、俺に関することで雄吾に対しては隠し事がない。
雄吾は俺の変化をすぐに見破る。
それに、小さい頃から、こいつは信じていいやつだ、と脳に焼き付いていたのだと思う。


「むかつく」


頭の中で笠井の顔がぐるぐると回っていた。

うあーと小さく悲鳴をあげ、ベッドに思い切り寝転んだ。
すぐ近くのシーツがゆっくりと沈む。雄吾が、隣に腰をおろした。


「聞き出したり、しないけど」


呟くように言った雄吾の言葉が終わるより先に俺は口を開き、放課後の出来事の一部始終を語った。
よく言われるが、本当に口から先に生まれて来たのかもしれない。


変に聞き出そうとしたりはしないでくれるから、俺は雄吾に話す。
これ以上信頼のおける相談相手は一生現れそうもない。


「両思い判明か」


雄吾も、俺と同じよう羽根布団の上にどさっと上体を倒した。2人で高い天井を見る。


「どうすればいい?」

「どうもするな。もともと、予想はしていたころだろう」

「でもゆうかの幸せを願うなら……」

「自分が大事。自分の気持ちが最優先」


雄吾は微笑むようにまぶたを下げ、少ししてゆっくりと言った。


「恋愛感情を持った人間は、利己主義であって当然だ」


ゆうかもこんな風に咲と穏やかな時間を過ごしているのだろうか……







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