私立秀麗華美学園
「……つまり、堂本の時より一層汚い手口だったってわけね」
雄吾が再びうなずく。
「のちに彼女が父親に聞いたところでは、やはり左遷されるような覚えはないらしい。
裏で手を回されていたのだということに気づかないはずはなかったが、『援助』によってよりよい環境で音楽をやれている三松の中では、諦めが勝ったのだと言っていた。
憤慨する気持ちはあれど、全貌の見えない強大な権力に抗う程の勇気は、持てなかったのだろうな」
「ひどい話やな」
「そうだな」
ゆうかは視線を伏せ、ティーカップに口をつけた。
「どの程度知られているのかしら。遺伝子の開発グループと、彼らによって行われているらしい、非人道的な『援助』の話は」
俺たちが知ることになったのは、たまたま咲の家、風來がそのプロジェクトに関わっていたからだ。もっとも咲によると、風來は早々に手を引いていたらしいが。
しかしそうでなければ、その秘密裏に行われているらしいプロジェクトの存在そのものを、知ることができていたかどうかは定かではない。
「そうだな。俺たちが今知っているのも、偶然だ。この学園の”特別な生徒”の存在は、基本的には学園中が知らない……もしくは口を噤んでいると見て間違いないだろう。
世間的にも恐らく知られてはいないだろうな。大きく取り上げられている様子はない。
ただ、開発グループには大本の企業がいるようだし、その動向を警戒すべき人々……例えば、俺たちを含む学園の生徒の親たちの認知度は……恐らく、それなりのものなのだろうな」
「あたしやっぱり、お父さんに聞いてみるわ。学園の生徒が関わってるてわかってしもたことやし、親が関わってた以上は、あたしにも聞く権利あると思うし」
「そうね。わたしたちが知っていていい情報なのかどうかも、怪しいところだけれど。咲にその権利はあると思う。少なくとも咲の親御さんなら、大人のやる事に口を出すななんて言ってあしらうこともないだろうしね」
咲は神妙な面持ちでこくりとうなずいた。
雄吾はその他にも2,3、尋ねごとをしたが、特に有力であったり目新しい情報と言えるものはなかったそうだ。
ひとけのない食堂に響く静かな4つの話し声。
俺たちの夏休みは、こうして始まった。
雄吾が再びうなずく。
「のちに彼女が父親に聞いたところでは、やはり左遷されるような覚えはないらしい。
裏で手を回されていたのだということに気づかないはずはなかったが、『援助』によってよりよい環境で音楽をやれている三松の中では、諦めが勝ったのだと言っていた。
憤慨する気持ちはあれど、全貌の見えない強大な権力に抗う程の勇気は、持てなかったのだろうな」
「ひどい話やな」
「そうだな」
ゆうかは視線を伏せ、ティーカップに口をつけた。
「どの程度知られているのかしら。遺伝子の開発グループと、彼らによって行われているらしい、非人道的な『援助』の話は」
俺たちが知ることになったのは、たまたま咲の家、風來がそのプロジェクトに関わっていたからだ。もっとも咲によると、風來は早々に手を引いていたらしいが。
しかしそうでなければ、その秘密裏に行われているらしいプロジェクトの存在そのものを、知ることができていたかどうかは定かではない。
「そうだな。俺たちが今知っているのも、偶然だ。この学園の”特別な生徒”の存在は、基本的には学園中が知らない……もしくは口を噤んでいると見て間違いないだろう。
世間的にも恐らく知られてはいないだろうな。大きく取り上げられている様子はない。
ただ、開発グループには大本の企業がいるようだし、その動向を警戒すべき人々……例えば、俺たちを含む学園の生徒の親たちの認知度は……恐らく、それなりのものなのだろうな」
「あたしやっぱり、お父さんに聞いてみるわ。学園の生徒が関わってるてわかってしもたことやし、親が関わってた以上は、あたしにも聞く権利あると思うし」
「そうね。わたしたちが知っていていい情報なのかどうかも、怪しいところだけれど。咲にその権利はあると思う。少なくとも咲の親御さんなら、大人のやる事に口を出すななんて言ってあしらうこともないだろうしね」
咲は神妙な面持ちでこくりとうなずいた。
雄吾はその他にも2,3、尋ねごとをしたが、特に有力であったり目新しい情報と言えるものはなかったそうだ。
ひとけのない食堂に響く静かな4つの話し声。
俺たちの夏休みは、こうして始まった。