私立秀麗華美学園
割と寝起きの悪いゆうかを降りるひとつ前の駅でおこし、乗り換えをする。
俺の家の最寄駅まではそこから二時間近くかかった。
計三時間以上列車に揺られ、目的の駅に到着したゆうかと俺は改札を出ると、荷物を下ろして伸びをした。
「はーあ、やっと着いた!」
「こっからが長いんだけどな」
「いつもだけど和人、悲観的すぎー」
あははーと笑うゆうかの足元の大きな白いかばんと、自分のキャリーケースを引っ張って歩き出す。ゆうかはUVカットのパーカーを着て、並ぶ。
ここからうちまでは、20分ぐらい歩かなければならなかった。街の中心部からは離れた地域とはいえ、夏にアスファルトの道の上を歩くのはかなり辛い。
それでも迎えの車を頼んだりしなかったのは、ゆうかも俺も、なんとなく石油の臭いが嫌いという、現代っ子らしからぬ部分を持っているからだ。
石油というか排気ガスの、息が詰まるような臭いや黒さに俺はどうしても慣れられなかったらしい。物心ついた頃からあんまり車で移動をした記憶はなかった。加えてゆうかは車酔いもよくする。
なので、二人で遠出(……あんまりないけど)や帰省をする時には、徒歩で移動が基本になっていた。
「……暑ーい」
「昼下がりだもんなあ。今、一番暑いかもな。休憩する?」
「ううん」
ハンカチで汗を拭って、ゆうかは「大丈夫」と呟いた。
ゆうかはどう考えても小悪魔で、サドで、ひと(特に俺)に対して厳しいがその代わり、学園にもたまにいる根っからの箱入りのご令嬢たちとは違って、自分に甘いわけではない。
だから弱音を吐くことはあんまりないし、理不尽すぎる要求をすることも滅多にない。
そんな健気な部分もあったりするのだ。
……とはいえ、前にも言ったように、それは弱小騎士付きの姫による一種の自立過剰である可能性も否定はできないのだが。
時間はあるのだし休憩してもいいと思ったが、ゆうかの意思を汲み、なるべく影を選んで一度も止まらずに月城家へと歩んだ。
俺の家の最寄駅まではそこから二時間近くかかった。
計三時間以上列車に揺られ、目的の駅に到着したゆうかと俺は改札を出ると、荷物を下ろして伸びをした。
「はーあ、やっと着いた!」
「こっからが長いんだけどな」
「いつもだけど和人、悲観的すぎー」
あははーと笑うゆうかの足元の大きな白いかばんと、自分のキャリーケースを引っ張って歩き出す。ゆうかはUVカットのパーカーを着て、並ぶ。
ここからうちまでは、20分ぐらい歩かなければならなかった。街の中心部からは離れた地域とはいえ、夏にアスファルトの道の上を歩くのはかなり辛い。
それでも迎えの車を頼んだりしなかったのは、ゆうかも俺も、なんとなく石油の臭いが嫌いという、現代っ子らしからぬ部分を持っているからだ。
石油というか排気ガスの、息が詰まるような臭いや黒さに俺はどうしても慣れられなかったらしい。物心ついた頃からあんまり車で移動をした記憶はなかった。加えてゆうかは車酔いもよくする。
なので、二人で遠出(……あんまりないけど)や帰省をする時には、徒歩で移動が基本になっていた。
「……暑ーい」
「昼下がりだもんなあ。今、一番暑いかもな。休憩する?」
「ううん」
ハンカチで汗を拭って、ゆうかは「大丈夫」と呟いた。
ゆうかはどう考えても小悪魔で、サドで、ひと(特に俺)に対して厳しいがその代わり、学園にもたまにいる根っからの箱入りのご令嬢たちとは違って、自分に甘いわけではない。
だから弱音を吐くことはあんまりないし、理不尽すぎる要求をすることも滅多にない。
そんな健気な部分もあったりするのだ。
……とはいえ、前にも言ったように、それは弱小騎士付きの姫による一種の自立過剰である可能性も否定はできないのだが。
時間はあるのだし休憩してもいいと思ったが、ゆうかの意思を汲み、なるべく影を選んで一度も止まらずに月城家へと歩んだ。