私立秀麗華美学園
*
「ちょっと、咲。服着なさいってば。風邪引くわよ!」
こちらはゆうかと咲の部屋。
楕円形のテーブルの上には、湯気を立てたピンクのマグカップが2つ。
間を空けて置かれた綺麗な勉強机は各々の好みで飾られている。
ベッドはぴったりとくっつけて置かれ、一部屋の中に2人の空間と個人の空間が混在していた。
ゆうかの大声の原因は咲だ。
お風呂上がり、彼女はいつも素肌にバスタオル一枚で部屋をうろつくのだった。
「ええやん別にー。女2人の部屋やんか。あたしあほやから、風邪引かへんし」
「そんな理屈通るわけないでしょ」
毎晩のことに言い飽きたゆうかは小さくため息を漏らし、自分のマグカップを手に取った。
隣に咲が座り、同じくカップを片手に取り上げた。
香りがいつものハーブティであることを確認するようにカップを顔に近づけたあと、ゆうかの顔を覗き込んだ。
「……何よ」
「なあ、ゆうかってほんまにさあ、和人のこと嫌いなん?」
「別に、嫌いだなんて言ってないじゃない」
ゆうかの語勢は弱々しく、自分でもそれに気づいたようで、咲から目を逸らした。
そのまま視線をカップへと押し込み、息を吹きかけ冷ましたハーブティをごくりと一口流し込む。
小さな沈黙の間に、咲もそれを何度か繰り返した。
「……ほんなら、今結婚せえ言われたら?」
「しないわよ。逃げてやる。今この時代、親が決めた結婚なんかに従うもんですか」
「そんなん、言ってもしょうがないって、わかってるくせに」
咲の言葉にゆうかは口を閉ざした。
「ゆうかは自分のきつい境遇、受け入れてる方やん。周りに比べて。やのに、和人とのことに関してだけは、妙に反発してるから」
咲は言葉をきり中身の減ったマグカップを見つめた。
「ちょっと、咲。服着なさいってば。風邪引くわよ!」
こちらはゆうかと咲の部屋。
楕円形のテーブルの上には、湯気を立てたピンクのマグカップが2つ。
間を空けて置かれた綺麗な勉強机は各々の好みで飾られている。
ベッドはぴったりとくっつけて置かれ、一部屋の中に2人の空間と個人の空間が混在していた。
ゆうかの大声の原因は咲だ。
お風呂上がり、彼女はいつも素肌にバスタオル一枚で部屋をうろつくのだった。
「ええやん別にー。女2人の部屋やんか。あたしあほやから、風邪引かへんし」
「そんな理屈通るわけないでしょ」
毎晩のことに言い飽きたゆうかは小さくため息を漏らし、自分のマグカップを手に取った。
隣に咲が座り、同じくカップを片手に取り上げた。
香りがいつものハーブティであることを確認するようにカップを顔に近づけたあと、ゆうかの顔を覗き込んだ。
「……何よ」
「なあ、ゆうかってほんまにさあ、和人のこと嫌いなん?」
「別に、嫌いだなんて言ってないじゃない」
ゆうかの語勢は弱々しく、自分でもそれに気づいたようで、咲から目を逸らした。
そのまま視線をカップへと押し込み、息を吹きかけ冷ましたハーブティをごくりと一口流し込む。
小さな沈黙の間に、咲もそれを何度か繰り返した。
「……ほんなら、今結婚せえ言われたら?」
「しないわよ。逃げてやる。今この時代、親が決めた結婚なんかに従うもんですか」
「そんなん、言ってもしょうがないって、わかってるくせに」
咲の言葉にゆうかは口を閉ざした。
「ゆうかは自分のきつい境遇、受け入れてる方やん。周りに比べて。やのに、和人とのことに関してだけは、妙に反発してるから」
咲は言葉をきり中身の減ったマグカップを見つめた。